ショー・ボート Show Boat

加藤龍太郎
演目ショー・ボート Show Boat
初演1927 / 12 / 27 初演続演回数 572回
分類Musical Drama, (初演時の分類は Musical Comedy) 2幕
劇場ジーグフェルド劇場 (Ziegfeld Theatre)
作曲ジェローム・カーン Jerome Kern
作詞オスカー・ハマースタイン二世 Oscar Hammerstein II
( “Bill” : P.G. Wodehouse, revised by Hammerstein)
その他、既成曲が2曲
台本Oscar Hammerstein II
原作エドナ・ファーバー Edna Ferber 小説 “Show Boat” 1926
演出Zeke Colvan & Oscar Hammerstein II
振付Sammy Lee
美術Joseph Urban
衣装Sammy Lee
編曲ロバート・ラッセル・ベネット Robert Russell Bennett
製作Florenz Ziegfeld, Jr.
出演Norma Terris, Howard Marsh, Helen Morgan, Charles Winninger, Edna May Oliver, Aunt Jemima, Jules Bledsoe
粗筋  アンディ船長率いるショー・ボートは、ミシシッピ河を上下しつつ各地で華やかに歌や踊りを魅せる、劇場付き蒸気船。
 船長の娘マグノリアもいつかは舞台に立ちたいと夢見ていた。一座のスタア歌手ジュリーは、黒人の血が混じっているのに白人と結婚した咎で、当局から追放命令を受け退去させられてしまう。
 マグノリアは賭博師ラベナルと恋に落ち、結婚し船を降りて街での生活を始める。ラベナルはしかし賭博の運が下降し、妻を棄て出奔してしまった。マグノリアは乳飲児を抱え歌手のオーディションに向かう。そこにはジュリーがいた。気づかれずに彼女を認め、事情を察したジュリー。わざと酔っ払って自らお払い箱になり、マグノリアに歌手の座を譲る。
 次第に名を上げたマグノリアは、父アンディと再会しショー・ボートへ戻る。時を経て、持ち直し訪ねてきたラベナルともよりを戻す。一家が揃ってのショーボートの船出。桟橋の陰には、涙をたたえてそっと見送るジュリーの姿があった。
 (再演や映画化の際に、細部や結末への導き方が多少変更されていることが多い。)
備考  それまでのミュージカルは概ね、他愛もない恋愛コメディやお伽話に歌や踊りが挟まっている、というものだった。しかし、この作品にはしっかりと物語の骨組みがあり、登場人物たちの喜怒哀楽を真摯に伝えた。何よりも、当時はストレートプレイでも、おいそれとは触れることのない人種差別問題を、必要不可欠な要素として真っ向から組み入れた。初めて白人と黒人が同じ舞台上で、同時に出演し歌い演技をしたミュージカル作品でもある。この作品をもって、真のミュージカルの幕開け、と語る者も少なくない。
 音楽面でも ”Make Believe” “Can’t Help Lovin’ Dat Man” “Ol’ Man River” をはじめ、今も歌い継がれる数々の歌曲がここから羽ばたいた。( “Bill” は既に1917年に発表されていたが、ジュリーの持ち歌にぴったりと、補作し今に残る名曲となった)
 隠れた主人公とも言える、生も死も抱き込んで悠々と流れるミシシッピ。それに寄せる “Ol’ Man River” を感動的に歌う黒人料理番ジョー。この役は偉大な歌手にして俳優ポール・ロブソン Paul Robeson を念頭に、カーンとハマースタインにより原作から広げられた。彼は初演の際には都合が付かなかったが、翌28年のロンドン公演、32年のブロードウェイ再演、36年の(本格的な)映画化、40年のロサンゼルス公演と出演し観客を魅了した。
 主人公を妹のように想い、影から力を貸す幸薄いジュリー。印象的なこの役には、淀川長治氏曰く「紐育一の芸者」ヘレン・モーガンが起用され、大きな魅力の一つになった。
 大がかりな作品ではあるが、再演も度々行われ、音源も数種類が残されている。
映画化  最初の映画化は1929年。舞台からの映画化というよりも、部分的にマグノリア中心のラヴ・ロマンスに近い。歌曲の数曲が挿入されているのみ。トーキー最初期の為、サイレント版とパートトーキー版の2種類が作られた。パートトーキー版では、物語が始まる前に5曲がガラ公演のように紹介され、サイレント版は物語部分のみの上映。
 本格的な映画化は1936年。ハマースタイン自身が脚色し、ジェームズ・ホエールが監督。ロブソン、モーガンを始め、アイリーン・ダン、ハッティ・マクダニエルら日本でも知られる名優が起用。新たな曲も追加され、「細部までエレガントに描かれた」(ケネス・アンガー:ハリウッド・バビロン)傑作となった。
 1951年にはジョージ・シドニー監督、キャサリン・グレイソン、ハワード・キール、エヴァ・ガードナー、ウィリアム・ウォーフィールドら豪華キャスト、テクニカラーで3度目の映画化。36年版には及ばないながらも、ミュージカル映画の名作の一本に数えられている。
音源(のいくつか)  1936年スタジオ録音盤:ヘレン・モーガンやポール・ロブソンが参加している。初演のオーケストレーション(編曲)ではなく、音楽監督はヴィクター・ヤング Victor Youngが務めた。
 1946年ブロードウェイ再演版:初演のオーケストレーションを担当したラッセル・ベネットがオリジナルを踏襲して指揮をした。32年及び36年録音もカップリングされている。
 1951年サウンドトラック:映画ではジュリー役エヴァ・ガードナーの歌唱はアネット・ウォーレンに吹き替えられていたが、CDにはどちらの歌唱も収録されている。  1962年スタジオ録音盤:バーバラ・クック Barbara Cook、ジョン・レイット John Raitt、ウォーフィールドらが参加。無記載だがラッセル・ベネットの編曲を元に演奏されている。
 1971年ロンドン再演盤:新たなオーケストレーションを採用し、これまでの盤よりも多くの劇中音楽や歌唱が録音された。ジュリー役クレオ・レーン Cleo Laine の歌唱が一際冴えている。
 1988年スタジオ録音盤:ラッセル・ベネットの初演に基づくオーケストレーション、検閲で (人種問題に触れすぎての) 削除された歌詞を復活させた初の全楽曲録音。フレデリカ・フォン・シュターデ Frederica von Stade、ジェリー・ハドリー Jerry Hadley、テレサ・ストラータス Teresa Stratas ら演技も歌唱も一級品の実力者が揃う。
 1993年トロント公演盤:高評につきブロードウェイにて940回続演(トニー賞)、全米ツァーやロンドン(オリヴィエ賞)、メルボルンでも上演されたハロルド・プリンス演出版の録音。レベッカ・ルーカー Rebecca Luker、ロネット・マッキー Lonette McKee、イレイン・ストリッチ Elaine Stritch 他出演。
参照
https://www.ibdb.com/broadway-production/show-boat-10538
https://en.wikipedia.org/wiki/Showboat_(disambiguation)
http://www.playbill.com/searchpage/search?q=Show+Boat
http://www.imdb.com/find?ref_=nv_sr_fn&q=show+boat&s=tt
The Musical Theatre : A Celebration by Alan Jay Lerner
Something Wonderful - Rodgers and Hammerstein’s Broadway revolution by Todd S. Purdum
Hollywood Babylon by Kenneth Anger
ブロードウェイ・ミュージカル事典 by 芝邦夫
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